栄養士になる勉強をするときも,保健の教科書の中にある「食事と健康」という単元の中にも健康的な食事として”バランスのよい食事”という言葉が必ず出てきます。
それだけでなく,保健の教科書の中には栄養の偏りをなくすために,30品目の食材から多くの栄養を摂りましょう,と書いてあります。
しかし,栄養のバランスを意識することは,見た目には美しいですが,健康的な食事とはいえません。
これは,現代の栄養学や教科書の内容に反することですので,私どもの立場から発言することは,これまで勉強することを否定することにもなりますが,あえて言います。
今回はその理由について見ていきたいと思います。
相対量だけ意識するのは危険
例えば,あなたがボディビルダーになりたいと考えたとしましょう。
全身の筋肉をバランスよく鍛えるために,腹筋10回,腕立て伏せ10回,背筋10回,スクワット10回,カーフレイズ10回 etcとすべてのメニューを均等に行います。
これでムキムキマッチョなボディビルダーになれるでしょうか?
確かにトレーニングは相対的に”バランス”はいいですよね。すべて10回ずつで万遍なく鍛えています。
しかし,このトレーニングは”絶対量”が不足しています。
ボディビルダー級に筋肉を大きくしたい場合は,マシンなども使用して極限まで筋トレをしないといけません。
当然,回数も多いですし,負荷も高くなります。
そのうえ,すべての筋肉を鍛えればよいわけではなく,美しいフォルムにするために「この時期は大胸筋を中心に鍛えよう」という風にトレーニングに偏りを持たせるはずです。
絶対量だけでなく,必要量も意識せよ
まわりくどいですが,もうひとつだけたとえ話をさせてください。
例えば,家を建てようと考えた時を想定してください。
その際には材料が必要ですが,木材を1t,瓦を1t,コンクリートを1t etcとすべての材料をバランスよく揃えれば家は建つでしょうか?
そんなことはありませんよね。
ここで意識するのはその”絶対量”です。
木材は,家の柱にも使うため1tでは足りず,5t分必要かもしれませんし,瓦を1t屋根に載せれば重すぎて困るので50kg分だけで済むかもしれない。
このように家を建てる際には,各材料の絶対量が大切であり,多過ぎても少な過ぎても家は建ちません。
そこに”バランスよく”という言葉が入る余地はないのです。
健康的な食事とは
以上見てきたことは,人間の体,そしてその材料になる食事にも同じことが言えます。
すなわち,”健康的な食事”とは栄養バランスのよい食事ではなく,各栄養素の必要量や絶対量を満たしている食事です。
例えば,体を作るためにタンパク質は一日に体重の1000分の1の量が必要です。
これは体重60kgの人の場合,60gのタンパク質が必要ということです。
これを食事から摂ろうとした場合,卵なら10個必要です。
人間の胃の大きさは決まっていますから,他の栄養素も同様にバランスよく摂ろうと思えば,胃のキャパシティを余裕で超えてしまいます。
もっと言えば,脂質は1gあたりのエネルギーが9kcalと言われていますので,60g摂取すれば,エネルギーとしては摂り過ぎにもつながります。
健康的な食事を摂るために極端なことを言えば,他の栄養素の摂取量がゼロだとしてもタンパク質の量は体重の1000分の1を摂らなければいけないということです。
そてほど,栄養素の絶対量,必要量というのは健康を維持したり健康レベルを向上させるために大切であるということです。
唯一,バランスを意識しなければいけないのはミネラルです。
ミネラルはカルシウムとマグネシウム,カリウムとナトリウムの関係のようにお互いに拮抗する関係のものはどちらかが多過ぎたり,少な過ぎたりすると体に不調をきたしますのでここはミネラルバランスを調べてみてください。
参考になれば幸いです!