新しい命をお腹に宿し,約10か月近く自らの中で栄養を与え,守り,育てる
この神秘的な現象が妊娠をするということです。
当然,妊娠中は気を付けることがたくさんあります。
タバコを吸ってはいけない,お酒を飲んではいけない,というのは言うまでもありませんが,
これは食べてはいけない
あれは食べた方が良い
など多くの情報が世に出回っています。
ただでさえ,お母さんは妊娠をしている間,流産したらどうしよう,早産したらどうしよう,など多くの不安を抱えながら,お腹に衝撃が加わらないよう慎重に過ごしています。
また,定期検診をする産婦人科の先生によっては体重管理のことをうるさく言われ,食事の量を我慢することもあります。
妊娠は,そんな時限爆弾を持っているかのようにひやひや・そわそわしながらストレスフルになるのが当たり前なのでしょうか?
確かに気を付けることは多くありますが,妊娠中の食事は一定のポイントさえ押さえておけば,それ以外のことはもう少し気を楽にしてよいと考えています。
今日は妊娠中の食事で意識してほしい3つのポイントについてお話をします。
質の良いたんぱく質を摂る
1日に必要なタンパク質量は
体重(kg)×1.0~1.5g のタンパク質量
と言われていますので,
体重50kgの人場合,50×1.0~1.5=50~75gのタンパク質量が必要になってきます。
お母さんの体にとってはもちろん,赤ちゃんの発達のためにも最重要な栄養素の一つがタンパク質です。
タンパク質を65g摂ろうと思えば,卵10個分です。
この量を一度に食べるのは難しいですし,同じものばかり食べるのは飽きてしまいますから,朝,昼,晩に分けて卵,お肉,魚,大豆などタンパク質を多く含む食品を組み合わせて摂りましょう。
ここで「質の良い」タンパク質とは何かといえば,タンパク質を構成している20種類のアミノ酸のうち,人体で合成できない9種類の必須アミノ酸の質と量を備えるタンパク質源のことです。
この指標の一つにプロテインスコアがあります。一般に植物性のタンパク質より,動物性のタンパク質の方がこのスコアが高い傾向にありますので,その意味でも動物性のタンパク質を多く摂りましょう。
質の良い油を摂る
妊娠中は,体重管理を医師から指導され,食事のカロリーをコントロールしている場合も多くあるかと思います。
その時に真っ先に削られるのがカロリーが高いと言われる油です。
しかし,油(脂質)も赤ちゃんの発達にとって大切な栄養素です。
ここでいう質の良い油とは,バターやラード,青魚の油,クルミやアボカドに含まれる脂質などです。
鉄分を十分量摂取する
鉄分は人体の代謝にとって重要は働きをしており,不足することで様々な身体的な不調が現れます。
現在,国内の産婦の10~15%が産後うつを経験するという報告もあります。
産後うつになる人を調べてみるとそのほとんどが栄養不足,特に鉄不足にとる貧血などがあったそうです。
もちろん,お腹の中にいる赤ちゃんも母体を通じてお母さんから鉄を受け取ってます。
そのお母さんが鉄不足だと赤ちゃんも鉄不足になってしまいます。
妊娠中は1日10mgの鉄分が必要といわれています。
しかし,鉄分は吸収率があまりよくない栄養素ですので,サプリメントなども活用しつつレバー,鹿肉,ラム肉,マグロ,アサリなど鉄分を含む食事を取り入れてみるとよいでしょう。
鉄分に関しても植物性の鉄分よりも動物性の鉄分の方が人体にとって使いやすい=質が良いといえます。
赤ちゃんは,母体を通じて栄養素をうけとり,お腹の中で成長していきます。
そう考えると,食事に細心の注意が必要ということですので自分が食べる食事に敏感になってしまいます。
しかし,食事に神経をすり減らし,ストレスをためるようでは身も心も持ちません。
食事は人間にとって楽しみなものです。添加物なども多少は許容しても良いでしょう。
今回,あえて糖質を制限しましょう とは書きませんでした。
もちろん,糖質は制限した方がよいのですが,妊娠中だってスイーツを食べたりしたいと思いますよね。
それが,過剰な範囲でなく,それによってストレスが解消されるのであれば食べてもいいと思います。
何かを制限するばかりでは食事も楽しめません。
それよりも3つのポイントだけ最低限押さえて,それ以外は多少気を楽にしておくことが10か月という間,妊娠期間を乗り切るために必要なことではないでしょうか。